「プレイヤーの行動予想」で準備が終わらなくなっていませんか?

はじめてGM(KP)を担当するとき、真面目な方ほど陥りやすいのが「プレイヤーがこう動いたらこう返す」「あっちへ行ったらこの描写を入れる」と、あらゆる分岐パターンを事前に想定してメモを作り込んでしまうことです。

シナリオのテキストを読み込み、想定問答集を作り、気づけば何日も準備に追われて疲れてしまう――。しかし、どれほど綿密に予想を立てても、実際のセッションではプレイヤーから予想外のアイデアが飛び出すのが常です。

完璧主義から抜け出し、準備の負担をぐっと減らすための有効なアプローチが、「プレイヤーが何をするか」を予想するのではなく、「そのシーンがどうなったら終わるか(次の場面へ進むか)」という終了条件(トリガー)だけを決めておく方法です。


なぜ「行動の予想」ではなく「終了条件」なのか

TRPGの魅力は、プレイヤーが自由な発想でキャラクターを動かせる点にあります。そのため、GMが入念に用意した選択肢AとBに対して、プレイヤーが選択肢Cを提案してくるのはごく自然なことです。

行動パターンをベースに準備をしていると、想定外の選択肢Cが出た瞬間に「用意したメモのどれにも当てはまらない」とパニックになってしまいます。

一方で、「このシーンは、プレイヤーが手がかりAを見つけたら終わり」「このシーンは、NPCに同行を依頼できたら終わり」というように、**各場面の出口(終了条件)**をあらかじめ決めておけば、過程がどう転んでも対応できます。

プレイヤーがどんなユニークな方法で手がかりに近づこうとしても、GMは「その行動で終了条件を満たせたかどうか」だけを判定すればよいからです。


シナリオを「3種類の終了トリガー」で整理する

準備の段階で、シナリオの各場面を読みながらメモ用紙に「シーンごとの終了条件」を1〜2行で書き出してみましょう。多くのシーンは、以下の3つのパターンのいずれかに当てはまります。

1. 情報トリガー(重要な手がかりが手に入った)

調査や探索のシーンで最も多いパターンです。

  • 準備メモの例: 「事件の現場:被害者の手帳(次の行き先が書いてある)を読んだら調査完了」
  • 当日の運用: プレイヤーが机を調べても、ゴミ箱をあさっても、部屋全体に技能判定を振っても構いません。プレイヤーの行動がもっともらしいものであれば、「調べた結果、手帳が見つかりました」として情報を渡し、次のシーンへ移ります。

2. 決断トリガー(方針や選択肢が決まった)

NPCとの対話や、作戦会議のシーンで使います。

  • 準備メモの例: 「NPCの自宅:NPCを信用して同行を頼むか、怪しんで距離を置くか、方針が決まったら出発」
  • 当日の運用: 会話の内容を一言一句コントロールする必要はありません。プレイヤーたちが「このNPCについていくかどうか」の結論を出した時点で、その会話シーンを区切って次の展開へ進めます。

3. 時間・イベントトリガー(一定のやり取りの後に自動で発生する)

プレイヤーが何をしても、外部からのアクションで状況が動くシーンです。

  • 準備メモの例: 「夜の洋館:探索を2箇所ほど行ったら、館の電気が消えて物音が響く」
  • 当日の運用: プレイヤーの行動を細かく制限せず、適度なところで「そのとき、突然館の電気が消えます」とイベントを挟みます。迷って停滞したときの仕切り直しにも使えます。

実際の準備メモはこれだけで足りる

シーンの終了条件を軸にすると、GMの手元に置くメモは驚くほどシンプルになります。

【導入】
・描写:依頼人からの手紙を読み上げる
・終了条件:全員が依頼を受けることに合意する

【シーン1:書斎の調査】
・情報:被害者の日記(怪しい人物の目撃談)
・終了条件:日記の情報を手に入れて、次の行き先(洋館)を特定する

【シーン2:洋館の探索】
・情報:鍵のかかった扉と、隠された鍵の場所
・終了条件:鍵を開けて奥の部屋に入る

【クライマックス】
・脅威:怪異の出現
・終了条件:怪異を無力化するか、部屋から脱出する

このように「シーン名」「渡す情報」「終了条件」だけを箇条書きにしておけば、本番中に分厚いシナリオ本文をめくって迷子になることもありません。


当日、プレイヤーが迷走したときの戻し方

終了条件を把握しておくと、プレイヤーが本筋とは関係のない調査に夢中になってしまったとき(いわゆる脱線)にも落ち着いて対処できます。

例えば、書斎の「日記」を見つけてほしいのに、プレイヤーが「カーテンの柄」や「絨毯の裏」を延々と調べ始めたとします。

行動を予想して準備していると「絨毯の裏には何もないと言わなきゃ……でも次はどこを調べてもらおう」と焦りますが、終了条件が「日記の情報が手に入ること」だと分かっていれば、柔軟なアドリブが出せます。

  • 「絨毯をめくろうとして屈んだとき、机の隙間に日記が落ちているのが目に入りました」
  • 「カーテンを調べていると、日記を開いたまま机に置き忘れているのが見えました」

このように、プレイヤーの能動的なアクションを活かしたまま、自然に終了条件を満たしてあげることができます。


まとめ:過程はプレイヤーに委ねて楽しもう

はじめてのGMでは、「完璧な筋書きを用意して、その通りに案内しなければならない」と思いがちです。

しかし、GMが用意すべきなのは「レール(細かな行動手順)」ではなく、「チェックポイント(各シーンの出口)」です。

出口さえ明確になっていれば、そこへ至る道筋はプレイヤーたちと一緒にその場で描いていけば問題ありません。準備の時間を「出口の整理」に絞り、当日はプレイヤーがどんなルートでそこへ向かうのかをGM自身も楽しんでみてください。