「もし〜されたらどうしよう」で準備が終わらない悩み
はじめてゲームマスター(GMやKPなど、以下GM)を担当するとき、多くの人が陥りがちなのが「プレイヤーの行動パターンをすべて事前に予測しようとしてしまう」という状態です。
「もしプレイヤーがこの部屋を調べなかったら?」「NPCに敵対的な態度をとったら?」「シナリオと違う順番で移動しようとしたら?」と考え始めると、ノートやメモ帳には無数の分岐ルートが増え続け、準備が一向に終わらなくなってしまいます。
しかし、TRPGの醍醐味はプレイヤーが自由に発想して行動することにあります。どれほど時間をかけて分岐を準備しても、実際の卓では想定の隙間を突くような提案が飛び出すものです。
完璧主義を手放し、準備の負担を減らしながらセッションを楽しく進行するための「準備の絞り方」をご紹介します。
分岐ではなく「渡したい重要情報」を箇条書きにする
準備を最小限にするための第一歩は、「プレイヤーがどう動くか」を予想するのをやめ、「どの情報をプレイヤーに掴んでもらう必要があるか」を整理することです。
シナリオの進行に必要な情報は、実はそれほど多くありません。
情報を「必須」と「フレーバー」に仕分ける
準備の段階で、シナリオ内の情報を次の2つに分類しておきます。
- クリアに必須の情報:これを知らないと次の場面に進めない、あるいは真相に辿り着けない情報(例:隠し扉の存在、事件の動機など)
- フレーバー情報:知らなくても進行には困らないが、知ると世界観の理解が深まる情報(例:屋敷の歴史、NPCの個人的な趣味など)
準備で絶対に落としてはいけないのは「クリアに必須の情報」だけです。この必須情報を3〜5個程度リストアップしておけば、進行の骨格は十分に保てます。
「情報の受け渡し方」をあらかじめ2〜3通り考えておく
特定の行動をとったときしか情報が出ない構造にしてしまうと、プレイヤーがその行動を選ばなかったときに進行が止まってしまいます。
そこで、「この情報はどの手段でも手に入る」という代替ルートを緩やかに決めておきます。
代替ルートの例
例えば「古い日記帳に重要な手がかりが書かれている」という場面を想定してみましょう。
- 本棚を調べる(標準的なルート)
- NPCに話を聞く(「そういえば主人が日記をつけていた」と教えてもらう)
- 部屋全体を見渡す(机の隙間から日記の角が見えていると描写する)
このように「調べる技能」が失敗したり、そもそも本棚に近寄らなかったりした場合でも、プレイヤーが試みた別の行動(NPCとの会話、部屋の観察など)に情報を乗せて渡せるようにしておきます。
「この行動をしないと出せない」とガチガチに固定するのではなく、「プレイヤーが何か能動的なアクションを起こしたら、その行動の成果として情報を渡す」という柔軟な姿勢を持つだけで、事前の分岐メモを何ページも書く必要がなくなります。
NPCの対応は「一貫した方針」を1行決めるだけにする
NPCとの会話でも、台詞を一言一句準備しようとすると膨大な時間がかかります。プレイヤーが何を話しかけてくるかは事前に予測できないためです。
NPCの準備は、台本を書くのではなく「このキャラクターが大切にしている方針(スタンス)」を1行だけ決めておくのが効果的です。
- NPCの方針例:
- 「とにかく自分の身を守りたいので、危険な場所には絶対に行きたがらない」
- 「礼儀正しい相手には親切にするが、横柄な態度を取られたら口を閉ざす」
- 「家族の安全のためなら、知っている秘密をあっさり打ち明ける」
方針が1行決まっていれば、プレイヤーからどんな予想外の質問や提案を投げかけられても、「このキャラならこう答えるだろう」とその場で無理なく判断できます。
まとめ:当日のプレイヤーの提案を楽しむために
GMの準備の目的は、当日起こるすべての出来事をコントロールすることではありません。プレイヤーが自由に動ける「舞台の枠組み」を用意することです。
- プレイヤーの全行動を予測する分岐作りはやめる
- 進行に「必須の情報」を数個だけ箇条書きにする
- 必須情報は、プレイヤーの別のアクションでも渡せる余白を持たせる
- NPCは台詞ではなく「1行の方針」だけ決めておく
準備をシンプルに絞り込むことで、心に余裕が生まれ、当日のプレイヤーの奇抜なアイデアや機転をGM自身も一緒に楽しむことができるようになります。まずは小さなメモから、気楽な気持ちで卓の準備を進めてみてください。
